日系ブラジル人教会レポート1:イントロダクション

「邪魔扱いされている」
「借金、ローンもあるのだから、すぐにブラジルに帰ることなどできない」
「税金も払ってきたのに、どうしてこういう時に助けてくれないのか?」
・・・この悲痛な叫びは、どこに届いているのだろうか?
 3月までに職を失うと言われている派遣労働者の数は、全国で8万人に上るであろうといわれている。朝日新聞(12月22日付)の調べによると、2008年10月から2009年3月までに解雇・雇い止めされる非正社員の数は、愛知だけで4104人、岐阜で1986人、静岡で1388人といわれている。
この数に含まれているのは、日本人だけではない。今まで日本の自動車産業のみならず日本の様々な産業の『見えない労働力』となってきた外国人労働者、特に日系ブラジル人労働者が、景気悪化の逆風を受けている。特に、東海地方ではその現状は厳しい。今後1月には解雇される外国人労働者は増え続けていくと、現地の日系ブラジル人は口をそろえて言う。しかも雇用保険の期限も1月後半には切れるため、無収入となる外国人労働者があふれだすという。岐阜県美濃加茂市では、一人の教会の牧師が知る限りでも、一日に20人もの日系ブラジル人が解雇されていた。
 
 聖書の中に幾度となく、『在留異国人』に対し特別な配慮をするよう命じられている箇所がある。
いつもなら『あの時代のこと』としてとらえてきた数千年前に書かれた言葉。しかし今の日本の『この時代』でも通じる真理なのかもしれないと思わせるのが、この日系ブラジル人の失業問題だ。景気が悪化してまず『切られる』のは外国人。いつの時代でも外国人とよばれる人がいわゆる『弱い』立場に立たされてきたものだ。が、しかしその現実の裏にはいつも、その声にならない声に耳を傾ける小さなヒーロー達が必ずいるものなのだ。
 
 そのヒーロー達はたいていの場合、大きな足音でやってこない。政府・知識人・財団といった装いではなく、『謙遜というマント』(ケイ・ウォレン師)をまとってやってくる。
日本においてはNPO法人よりも公的な民間団体として認められにくく、
お寺や神社などの『メジャーな』宗教法人よりも日が当たらず、
その上日本では1%未満という人口を「誇る」という、
最も小さな共同体である『教会』の活動を中心にここでは紹介していきたい。
 この『小さなヒーローたち』は、一見すると微弱で、東海地方各県に数千人いると言われる外国人労働者の全てを助けることはできないかもしれない。しかし、住まいを失った同胞に教会の場所を提供し、食べ物を分け合い、仕事の相談にのる・・・。そんな焼け石に水・・・ではなく、火が消えそうになっているろうそくに丁寧にもう一度ともしびを灯すかのように、懸命に働いているのだ。
その事実は、誰も否定できない。
 12月中旬、東京の教会スタッフ2名を、愛知県知多郡と岐阜県美濃加茂市の各教会牧師とその近郊に住む家族の方々が迎えてくれた。わずかな時間ではあったが、そこで私たちが現地で見た現状・日系ブラジル人の方々の声を、数回にわたってお伝えしたいと思う。