日系ブラジル人支援 最新レポート バチスタビダ教会近況報告

愛知県知多郡東浦町の日系ブラジル人支援の拠点となっているバチスタ・ビダ教会の牧師・宮里マルコ師から、2009年6月現在の近況報告があった。同教会には約100名の日系ブラジル人信者が集う。日本人教会やNPOと協力し、信者だけでなく、ペルー人コミュニティーや、名古屋市内の日本人ホームレスの支援にも参加してきた。

<近況報告>
2008年11月から不況が始まり、この時期解雇された人たちが受けていた雇用保険は現在切れている状態。受け取っていた額は、月収が30万円だった場合で、12~15万円とのこと。解雇された時期が少し後だった者は、今でも雇用保険を受けているが、それが切れるのも時間の問題とのこと。 この月12-15万円の雇用保険は、家賃、光熱費等にあてられ、食費が全くない状態だったが、日本人教会やNPOの協力のもと行ってきた食糧支援プログラムにより生き延びることができ感謝している。 現在この雇用保険が切れた教会員がほとんどとなってきている。教会員からの献金額の低下は3ヶ月前の時点で通常の10万円減、今月は40万円減まで下がった。


<ビデオ作成:バチスタビダ教会 草場さん>


そんな中、名前を語らない日本人の方から現金書留で2回にわたりまとまった額の献金が寄せられたという。この方はまず教会に電話を下さり、大変な状況に同情と理解を示し、献金を送るから必要な目的のために用いて欲しいと語ったという。決して名前を明かさず、その電話からしばらくして現金書留が2回にわたり届けられたとのこと。

この献金の一部は、そのとき特に経済的に厳しい状況にあった2家族にささげられ、残りは食糧支援プログラムの資金として、米の一括購入に用いられた。この米は36家族へ分配された。

この食糧支援プログラムは、NPOや日本人教会などから寄せられる寄付の管理と分配の他、自分たちで米、マメ、洗濯石鹸などの生活必需品などを安価で一括購入し、低価格または無料で分配する、というものだ。会社経営の経験があり、教会員の一人である森重マルコスさんが仕入を担当しており、一度に二百数十キロの米を3回にわけて仕入れたという。他に、ブラジルで多く食べられているマメも一括購入しているが、これは米と一緒に食べることで非常に腹持ちがよく、重労働にもたえられるとのこと。

しかし、このフードプログラムも存続が難しくなってきている。雇用保険が切れ、まだ仕事がある会員たちも早退や週休3日を余儀なくされる中、このプログラムの運用資金が充分に供給されにくくなっているという。

食糧支援プログラムのほか、公立学校の体育館を借りて衣料品のバザーを行ったが、これも地域の日本人の皆さんの参加がなければ続けていくことは難しい。

バチスタビダ教会が牧師に給料を払えるようになったのは3年前。それまで牧師自身、普通の仕事について働きながら教会に仕えていた。現在の状態では、また3年前と同じように仕事をしながら牧師をする必要があるのだが、果たして仕事が見つかるのかどうかわからない。

また、4年前からインドネシアに送り出している宣教師への送金も何とか続けたいがこれも心配とのこと。

日本政府がブラジル帰国者へ30万円を補助してくれる制度もあるが、帰国したほうが暮らしは大変になる。子どもたちは日本で生まれ育っており、学校も日本の公立学校に通っていて、考え方は全くの日本人。ブラジルの学校では言葉も通じず、いじめにあうとのこと。またビジネスの仕方も出国時の十数年前と変わっており、まともに仕事をするのは難しいとのこと。

ブラジルに帰国することを前提で来日した家族は、子どもを在日ブラジル人学校に送っていた。その多くが帰国をした。しかし中には帰国できない家族もいる。在日ブラジル人学校の学費は月4万円ほど。この不況でほとんどの子どもたちが在日ブラジル人学校に通えなくなった。その子どもたちは日本語ができない状態で日本の公立学校に送っている。教会員の子どもの中に、在日ブラジル人学校から公立の中学3年に編入した子がいるが、かなりの困難を経験しているという。

先日、ブラジルの教会の牧師から宮里師へ電話があった。日本から帰国した日系ブラジル人のコミュニティーがあり、どのように支援したらいいかアドバイスが欲しいということだった。帰国した日系ブラジル人は、現地では外国人のように見られており、現地の教会もどのように支援したらよいかわからず、模索している最中であるという。

自分たちの国はもはやブラジルではなく、日本である、とほとんどの教会員が感じている。とにかく仕事が欲しい。仕事をやりたくないのではなく、仕事をしたいが、どうしても見つからない状況。

日本人向けの求人広告に応募しても、名前を明かすと、どんなに日本語ができても断られてしまう。なので、日本人の協力者の方に派遣会社の設立を手伝っていただき、その方に窓口となっていただき、就職先を探したい。この試みはフィリピン人支援を続けているマハリカミッションの大岡師が成果をあげており、同じような日本人協力者が現れることを願っている。

一方、日本で生まれ育った3世の子たちはこの不況でもバイトを自分たちで見つけ、たくましく家族を支えているという。宮里師の長男・あきら君は、今年の春無事定時制の高校に入学した。現在飲食店で週7日、数時間ずつアルバイトをしているという。

また同じ3世の子でも、名前が日本名でない子たちは、面接にすらこぎつけないケースが多いという。3世の子らは日本で生まれ育っており、言葉も日本語の方が得意だ。考え方、言葉遣いとも普通の日本人の中高生となんら変わらない。

人種を超えた教会同士のネットワーク、そして教会だけでなくNPOや個人や様々な人々の支援によりここまでやって来れたことに深く感謝している。これからも就職支援活動をはじめ、様々な活動を行っていく必要がある。是非引き続き日本人教会の皆さんの支援をお願いしたい。



<連絡先>
バチスタビダ教会(宮里マルコ牧師)
〒470-2104 愛知県知多郡東浦町大字生路字生川尻 16の1
電話:0562-83-7882